2018年9月30日日曜日

『CASABELLA JAPAN』887/8号「社会に資する建築」

今回の論考は「社会に資する建築」と題するものです。内容はモダニズムと社会主義的理想のオーヴァーラップについてです。前稿では美について論じましたが、建築の立脚点に注目すれば、20世紀建築においては美の揺らぎと相前後するように社会的使命が力強く自覚されるようになったと言えます。建築の理想は、より良き社会の実現をめざす気高い志によって支えられました。だから、建築家はときに社会改革者にもなりえたのです。社会主義革命の結末がすでに確認されている現在の地平からすると、理想と現実のギャップから目をそらすことはできませんし、聞こえの良い理想を語ることがますますはばかられるようになってもいます。それでも、建築に使命を感じ、何かをなそうとしてきたこれまでの道のりへはしっかりと目を向けねばなりません。