2015年11月22日日曜日

カルチャー・ヴィジョン・ジャパン

虎ノ門ヒルズで行われたカルチャー・ヴィジョン・ジャパン講演会「東京祝祭都市構想」へ行ってきました。浅田彰さん司会で軽妙にスタート。磯崎新さんの祝祭都市小論、妹島和世さんの祝祭広場プロジェクト、名和晃平さんのメディア・プロジェクトが披露されました。自分とは畑違いということもあり、名和さんのプレゼンはじつに新鮮でした。建築に縛られないとここまで自由なのか。幾つもの可能性の中から、2020年までにどれほどのことが実現していくのか楽しみ。さて懇親会では、元文科大臣による「場所を変えればいけるんじゃないか」といういきなりの釘刺しもあり。実現をめざす政治家の立場からすれば、さすがに皇居前広場ってのはいささかパンチがききすぎていますよね・・・。ともあれ、磯崎さんが言うように、この構想はプラットフォーム、いわばはじまりです。この先、どういうふうに展開していくのか、注視したいと思います。

2015年11月4日水曜日

内野正樹さんインタビュー

『建築ジャーナル』2015年11月のインタビュー企画で、内野正樹さんにインタビューしました。かつて『建築文化』を担当されていた(まだ若手と言って良い)編集者。『建築文化』といえば、大学院生の頃、研究室にその新刊紹介を書く仕事があって、その仕事が自身の執筆業(報酬があるという意味で)デビューだった。残念ながら、90年代末にこの新刊紹介仕事は消滅し、『建築文化』も随分趣を変えた。たぶん、そのリニューアル時の担当が内野さんではなかったか。ディスクメディアを付けたり、20世紀建築家の振り返りをしたりと、大幅にテコ入れをされていた記憶がある。現在は、建築関係で単行本をあれこれ企画しておられ、慎重に市場を見極めておられる感じ。しかし、建築を超えた多様な好奇心はいまだ変わらずという印象でした。今後の出版企画にも大いに期待したいところです。

長尾重武先生『ピラネージ牢獄論』出版記念イベント

11月3日文化の日に長尾重武先生出版記念イベントが催されました。私にとって長尾先生は研究室の大先輩でもあり、また、武蔵野美術大学で数年にわたって講師のチャンスをいただいた恩人です。昨年度、先生は大学の最終講義をなさったばかりですが、その内容、ピラネージの名作「牢獄」論がこうして立派な研究書に結実したこと、本当にうれしく思います。私もミニ・シンポジウムで少しばかりお話をさせていただきました。以前アセテートから出させていただいた『ピラネージ建築論 対話』は、本来長尾先生によるもっと大きな企画のなかで準備していたものでした。
会場には、ヴァージョンのちがう「牢獄」が壁に飾られ、ちょっとしたサロンのような雰囲気でした。サックスの演奏を交えたパーティーを含め、長尾先生のお人柄を映すかのように、穏やかにしてシックな会でした。

2015年11月3日火曜日

「磯崎新が日本の建築界にもたらしたこと」を寄稿しました

『建築ジャーナル』2015年11月号に「戦後建築の70年」という企画があり、磯崎新さんについて書かせていただきました。磯崎さんと出した『日本建築思想史』の後に、編集長から依頼されたものです。いわば芋づる式の仕事。内容については現物を見ていただくことにして、もう少し書きたかったけれど全体構成上あまり突っ込めなかったポイントに、磯崎言説と西洋建築史学の並走関係があります。一番わかりやすいのが「マニエリスム」。1970-80年代、日本における西洋美術史学・西洋建築史学において、ルネサンス概念のリヴィジョンとして「マニエリスム」という用語がかなりもてはやされましたが、同時代磯崎のエッセイにもこの情報はかなり積極的に取り入れられています。たとえば、ジュリオ・ロマーノのような掟破りの作家に、磯崎が熱い眼差しを向けるのは、きわめてわかりやすい例。このような時空を超えた建築家のシンクロ状況をきちんと追っかけると、もうひとつの現代建築家論/西洋建築史学史が書けるはずなんです。書く時間があれば、ですけれど。
『ジャーナル』誌の最後に触れた「ホワイトハウス」、自宅から散歩がてら行ってきました。いまはカフェになっています。コーヒーを一杯飲みながらじっくり鑑賞することができました。

2015年8月7日金曜日

atプラス25号「東京祝祭都市構想」に寄稿しました

雑誌『atプラス』25号が送られてきました。表紙は磯崎新さん。特集は「2020年東京五輪に向けて 東京祝祭都市構想」と題されています。僭越ながら、わたしも「ローマ・ヴェネツィア広場」を寄稿させていただきました。イタリアと日本、戦前はオリンピックや万博の招致に凌ぎを削り、譲り合った仲でもあります。すなわち、2020東京とゆるやかなつながりをもつ、ローマの広場を論じたわけ。今回、磯崎さんが持ちだしてきた皇居前広場との呼応は言うまでもないところです。
さて、話は前の本の打ち上げ時にさかのぼります。たしかザハ・ハディドの新国立競技場に対し縮小案が提示されていた頃だったと記憶します。磯崎さんいわく。皇居前広場でちょっと考えたいんだ、と。むむ、まさか対案ってことですか・・・。
その詳細は、雑誌の巻頭インタビュー最後の方に見ることができます。複数の提案があるのですが、なーんとSANAAが描いているんです。そんなこともあるんだから、こうしたグラフィックは、もうちょっと目立つようにできたらよかったと思う次第。
当の国立競技場は白紙に戻ってしまいましたね。施設がどうなるかはさておき、いろいろなことが議論される場にはなっています。これとて、きわめて現代的な騒ぎ(=祝祭)と言えなくもない。

2015年7月1日水曜日

植田実さんインタビュー「エディトリアルデザインという建築批評」が出ました

『建築ジャーナル』誌に植田実さんのインタビュー記事が載りました。今回は司会の立場で、なんとか興味深い発言を引き出せるようにがんばったつもりです。専門誌として『新建築』、『建築文化』とはまた違う強烈な個性を放った『都市住宅』。まちがいなくレジェンドです。自分が学んだ先生方が若いころ、この雑誌を活躍の場にしていたことを思うとホント羨ましいかぎり。ただ、過去のレジェンドを見て懐かしむばかりではいけない。今の問題を見るべく次のインタビューの方向性が、ついこの間検討されたばかり。聞き取りはこの夏。レジェンド編集長から次の展開がどうなるか、どうぞおたのしみに。

2015年6月4日木曜日

藤森照信さん講演会

大学のレクチャーシリーズに藤森照信さんがいらっしゃいました。いつものように興味深い話題提供。楽しげな雰囲気のままあっという間に講演終了。しかし、これをもって、彼をお気楽な「エンタの神様」だと思ってはいけない。それでは術にはめられたってことになる。その足跡に、「野生の勘」が頼りになっていること、これが実に実に重いのだ。この「野生の勘」こそ、常に神秘のベールに包まれていて、なんだかよくわからないままに聞く人はひきこまれてゆく。と同時に、みなさんには真似できない(真似しないでください)、ってことが確実に密やかに言われているわけで・・・。むぅー、と今回もなるべく術にはまらないようにしていたのだけれど、けっこういろいろなことを考えさせられてしまった。それも結局のところ、ちがう術にかかった、ということなのか。

2015年5月1日金曜日

10+1ウェブサイト「研究室の現在」に寄稿しました

研究室の必読書を紹介する記事を書きました。
http://10plus1.jp/monthly/2015/05/issue-05.php
記事を書きながら思ったこと。研究室を巣立つ学生は、自分と同じように研究者になるわけではない。いや、ほとんどならない。必読書のチョイスにあたっては、この事実をどのように踏まえるかがポイントでした。アカデミズムの押しつけになりすぎるのは良くない。けれども、あまりに拙速な実用主義も問題。微妙なところです。たぶん、〈自分にとっての必読書〉であれば別なチョイスがあるんだろうと思いながら、一応、学生向けの記事をまとめました。
しかし、他の研究室の記事を読むと、同じ建築分野でもさまざまな方向性が見えておもしろいですね。なかには、学部生になかなかハードなものを読ませているんだなぁと思わせるものもあり。自分にとっては大いに励みになります。

2015年4月10日金曜日

安藤忠雄さんから御本をいただきました

『安藤忠雄の建築4』(TOTO出版)をいただきました。いつものようにメッセージ&スケッチ&手紙入りでした。手紙によれば、『日本建築思想史』を読んでいただいたとのこと。現代日本の建築シーンを論じるのに安藤さんが欠かせない建築家であることは言うまでもないことですが、自分にとっては恩師の盟友としても大きな存在です。力強い励ましの言葉もいただきました。この丁寧さと細かさが、安藤さんのすごさ。ありがとうございました。

2015年4月8日水曜日

「だれも知らない建築のはなし」試写会へ行ってきました

石山友美さんの制作したドキュメンタリー映像「だれも知らない建築のはなし」、試写の招待を頂いていたので、見に行ってきました。ビエンナーレでは日本館のピロティ・スペースで流れていた映像。昨夏ヴェネツィアでは滞在時間が短すぎて満足に見ることがかなわなかったので、今回の試写会にはなんとしてもと思っていました。
映像作品、実によかったです。ストーリーとしては、とくにポストモダニズムまでが面白かった。しかし、アイゼンマンがあんなにわかりやすく話す人だとは…。難解な理論家のイメージがあったので、いまさらに好感度アップ。ジェンクスのコメントもわかりやすくてよかった。コールハースはあいかわらず斜めな感じで○。
日本人建築家は、磯崎新、安藤忠雄、伊東豊雄、三名だけでしたが、それぞれの語りに三者それぞれの立場が透け見えました。ポストモダニズムを含め、今後きちんとした歴史的検証がなされていくことを予感させました。ちなみに福岡のデベロッパーの方のコメント、効果的でした。こういう企画では実に貴重。

2015年3月31日火曜日

『建築家とファシズム』レビューを書きました

『日伊文化研究』53号にジョルジョ・チゥッチ著『建築家とファシズム』のレビューを書きました。訳者の鹿野正樹さんを囲んだ出版記念パーティー、ヴェネツィア派の集まりで、陣内秀信先生に依頼された仕事です。ちなみに僕はミラノ派だそうで。本号の特集がちょうど「ファシズムと芸術」だから、まさにタイムリーでした。

2015年3月26日木曜日

『日本建築思想史』が出ました!

太田出版から『日本建築思想史』が送られてきました。磯崎新さんとの共著書です。早いもので企画開始から4年経ってしまいましたが、毎度毎度、ひとつの作業がこうして形になるとやはり感慨深いものです。帯には「磯崎新、初めて建築史を語る。」とあります。実に意味深。タイトルもなかなか挑戦的。磯崎さんや編集の柴山さんと良いコラボレーションができたように思います。当初は一般向けのやさしい内容を想定していましたが、磯崎さんの舌も絶好調で、ハイブローな趣になりました。本書の出版がひとつの区切りですが、磯崎さんによれば、違う内容でコラボがあるとかないとか。さて、どうなりますか。

2015年3月20日金曜日

戀水桜花さんが千葉県建築学生賞最優秀賞を受賞しました!

研究室4年の戀水桜花さんが千葉県建築学生賞(卒業設計コンクール)で最優秀賞をいただいたようです。https://ja-jp.facebook.com/arch.grad.prize
建築史研究室ではあるけれど、こうして建築の設計でも認められるというのは本当にうれしいことです。彼女のテーマは、人の生と死に関わる非常に重たいものでしたが、「深い思考」という点で研究室が掲げるヴィジョンにも近いものだったと思います。いやー、実にめでたい。